車輪よ回れ、空回りも恐れずに

自転車に乗っているとこの世が物理法則に支配されていることをイヤでも思い知ります。速く走るにはよりパワーが必要です。
ハブダイナモでの発電ももちろん物理法則に支配されているので、2倍の速さで走ったら(回したら)、2倍の発電するだろうと思うところなのですが。

自転車のダイナモの規格はJIS C9502:2014で定められていて、例えば6V3Wの定格出力は15km/hでの走行時にその出力が出るように定められています。(ロードバイクの700x23cのホイールサイズだと周長2,096mmで1秒にほぼ2回転)
また負荷は白熱電球(豆球)想定なので、スピードが出た時に発電量が単純に増えると豆球が焼き切れてしまいます。そこでJIS規格上、速度30km/hのとき、電圧が定格の133%までに収まるようにと規定があります。

標準運転特性 15km/h 定格の±5%以内 5.7~6.3V
低速運転特性 5km/h 15km/hの時の41%以上 2.46V以上
高速運転特性 30km/h 15km/hの時の133%以下 7.98V以下

ダイナモ出力特性の規定 JIS C9502:2014より

6V3Wということは、負荷電流はI15=P15/V15なので0.5A、負荷抵抗はR=V15/I15で12Ωです。12Ωの固定負荷で30km/hで走行すればI30=V30/R=7.98/12=0.665Aに・・・とは、なりません。一体どういうことなのか。

ネットで検索してみると過去にハブダイナモの発電特性を測定されて公開されている方がおられます。非常に貴重なデータです。

ハブダイナモ(少なくともシマノ製)はたとえ出力を短絡しても定格電流より(有意に)多く流れることはありません。この現象は電機子反作用によるものだと推測しています。ハブダイナモは永久磁石の磁界の中でコイルを動かして発電します。この時何もつながず無負荷であれば、速度に応じた電圧が発生するのですが、負荷をつなぐと電気を取り出したときに流れる電流で、永久磁石の磁界をハブダイナモ自身が弱めてしまい電圧が下がってしまうのです。

RIGHT STUFF, Inc.のページには速度と負荷についての考察があり、どうやら速度に応じて適切な負荷を選択すれば定格以上の電力を取り出せるようだということです。

ならば、詳細に調べるしかないということで、測定台と可変負荷を作成して実測してみました。こんな風に。

 

 

同じ速度で無負荷、短絡、何種類かの負荷をかけて測定すると、RIGHT STUFF, Inc.にある想像のグラフに近い特性が取れました。

およそ定格電流の80%=400mAになる負荷をつないだ時に、その速度での最大電力が取り出せるのです。測定データを整理してグラフを書いてみるとこのような感じになります。(生データには測定誤差があるので、ここまで綺麗な曲線ではないですが)

さて、ハブダイナモの特性はつかめました。速度に応じて負荷=抵抗値を「自動的」かつ「連続的」に変化させればその走行速度での「最大電力」を取り出すことが可能になります。ただ、性能測定時には電圧・電流をみながら、スイッチをon/offして抵抗値を変化させていたのですが、そんなものは実用になりません。さてどうしたものか。

さらに、続く

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