逆に考えるんだ「〇〇を××すればいい」と

さてさて、前回ハブダイナモの特性を調べることが出来ました、定格電流の80%で電気を取り出すのが最適だと。そうどんな時も400mAになる負荷を実現すればいいのだけど、いやいや、でもそれどうやって実現するの?

あーでもない、こーでもないと(5年もの間)構想を練っているとき、ある貴族の言葉がよぎりました。

逆に考えるんだ「電圧を制御すればいい」と。


簡単に400mAの定電流負荷と言っても、ハブダイナモの出力は周期的に方向・大きさの変わる交流です。さらに、走行速度に比例して周波数も変わるので、基準が常に変化する電流を直接制御する方法は私では考えつきませんでした。商用電源なら電圧波形を基準に電流を制御して、力率改善するアクティブPFCという技術ががあるのですが、ハブダイナモだと電源が非力すぎて電流を取り出すと電圧が下がってしまいこの手が使えません・・・

グラフを違う観点でとらえると、負荷電流が400mAになる点の電圧は速度によって決まってきます。30km/hだと18.3V、60km/hだと36.6V。

速度・・・言い換えれば周波数と電圧の比率が一定、V/f一定制御です。交流回転機での可変速運転の基礎でした。(電車のVVVFインバーター制御なんかも基本はこれ)

そこでダイオードブリッジで整流した直流電圧をハブダイナモの周波数に比例させる構成を考えました。

ハブダイナモの出力から電圧の反転をカウントしてF/V変換(周波数→電圧)し、実験結果から求められた発電効率の良い基準を作ります。その基準とダイオードブリッジの出力を比較し、基準より電圧が高くなれば電気を取り出す、低くなれば貯めるという動作にします。DC-DCコンバータの一次側の電圧を制御、しかも可変でというのは珍しい形態なのではないかと個人的に思っています。

DC-DCの出力先はニッケル水素充電池(単三 6本直列で7.2V)です。フロート充電の構成にすることで走行速度の変動による発電量の変動を吸収させるためです。まさしくダムの働きをします。フロート充電はニッケル水素充電池にとっては手荒な使い方ですが、寿命が来たら交換と割り切った設計にしました。重量、体積の観点だとリチウムイオン電池にしたいところですが、扱いがシビアなので見送りました。

続いて別の観点の話です。一般的には交流を直流に変換するのにダイオードを4つ使ったブリッジダイオードを使用します。ところが通常のPN接合ダイオードで0.7V程度、ショットキーバリアダイオード(SBD)で0.35V程度の順方向電圧降下が発生してしまいます。しかも電流の行きと帰りで2回ダイオードを経由するので2倍の損失です。
ざっと定格電流で計算すると、通常のダイオードの場合 0.7V x 2 =1.4V、500mAとして0.7W、SBDの場合 0.35V x 2 =0.7V、500mAとして0.35Wの程度損失があります。ハブダイナモの定格出力3Wに対して前者だと23.3%、後者でも11.7%と決して無視できる数字ではありません。

そこで変換効率を上げるため、交流から直流に変換するダイオードブリッジの部分にMOSFETを利用した理想ダイオードブリッジを採用しました。いろいろ調べてみると便利なIC(LT4320-1)があるもんですね、その分お高くなりますが・・・
今回使用したMOSFETのオン抵抗は9mΩなので同じく定格電流で計算した場合の損失は、9mΩ x 500mA 2 x 2 = 4.5mW、単位が違う。通常のダイオードと比較して155分の1、SBDの77分の1と劇的に改善、というか無視できるレベル、ハブダイナモの定格に対してたった0.15%の損失になりました。
(以前失敗したクール・バイパス・スイッチもMOSFETを使用した理想ダイオードでした。ただ整流用のフルブリッジを組むような用途は考慮されていませんでした。)

これらをまとめたのがこの高効率ハブダイナモ充電回路です。(試作版ですが再掲)

(回路図と部品リストはそのうち・・・)

出来上がったこちらのハブダイナモ充電回路ですが、測定台上での試験で60km/hで回したときに充電電流1.3A、充電端の電圧が8.4V、11.2Wでの充電ができているのを確認しました。(変換効率90%とするとハブダイナモの発電は12.4Wとなります)

んで、3Dプリンタでケースをチョイチョイと作成中。

ここまで作っておいてなんですが、ツーリング時に時速25km/h以上(要は下り坂)での発電効率にこだわらなければ、理想ダイオードブリッジ+ニッケル水素充電池 6本の構成で十分かと思います(4Wくらいまでは対応可能)。ここまで作ったけど、ほぼ自己満足の世界です。

死にGo線(酷道425号 )やヨサク(酷道439号 )縦走みたいな峠越え中心のツーリングなら、下り坂での勢いを無駄にしないってのは重要なんですよ!

あぁ、また行きたいな~、キャンプツーリング。

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